色に関する不思議はゲーテの予想を超えてきているのではないだろうか。
35億年前にたった一度だけ生じた二つのカタラーゼの結合という偶然は、環境条件に対する耐性をもたらし、シアノバクテリアを今日まで生存せしめた。そして全ての生物、LUCAの子孫を光合成のシステムの下にこの青い地球上に繁栄させるもとになったというのだ。われわれ人類をはじめとする動物のもつ血液の中にもその環境条件に関する耐性は受け継がれている。その耐性のもとは色素であり、紫外線、放射線の厳しい環境をくぐりぬけた歴史が解明されてきている。NICK LANEによる世界を構成する酸素という書物「生と死の自然史」は色の持つ不思議を解明していく過程でこれまでの科学の常識を覆し、古くからの言い伝えの中に真実があるということを改めて思い知らされる書物だ。